東京地方裁判所 平成12年(ワ)1976号 判決 2000年10月31日
原告
社団法人日本音楽著作権協会
右代表者理事
A
右訴訟代理人弁護士
小野寺富男
被告
B
同
C
同
D
右三名訴訟代理人弁護士
清井礼司
主文
一 被告Bは、東京都世田谷区<以下略>所在の飲食店「シャレード」(以下「本件店舗」という。)において、別紙「カラオケ楽曲リスト」記載の音楽著作物を、次の方法により使用してはならない。
1 カラオケ装置を操作し又は顧客に操作させて伴奏音楽を再生する方法
2 カラオケ装置を操作し又は顧客に操作させて伴奏音楽に合わせて顧客に歌唱させる方法
二 被告Bは、別紙「物件目録」記載のカラオケ関連機器を本件店舗から撤去せよ。
三 被告Bは、原告に対し、金二二〇万九八六〇円及びこれに対する平成一二年二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告のその余の被告らに対する請求を棄却する。
五 訴訟費用は、これを三分し、その一を被告Bの負担とし、その余を原告の負担とする。
六 この判決は、第一項及び第三項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求の趣旨
一 被告らは、本件店舗において、別紙「カラオケ楽曲リスト」記載の音楽著作物を、次の方法により使用してはならない。
1 カラオケ装置を操作し又は顧客に操作させて伴奏音楽を再生する方法
2 カラオケ装置を操作し又は顧客に操作させて伴奏音楽に合わせて顧客に歌唱させる方法
二 被告らは、別紙「物件目録」記載のカラオケ関連機器を本件店舗から撤去せよ。
三 被告らは、原告に対し、各自金二二〇万九八六〇円及びこれに対する平成一二年二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、別紙「カラオケ楽曲リスト」記載の音楽著作物(以下「本件著作物」という。)についてその各著作権者から著作権(以下「本件著作権」という。)の信託的譲渡を受けてこれを管理する団体である原告が、被告らに対し、被告らは共同して本件店舗を経営し、原告の許諾を得ることなく、本件店舗においてカラオケ装置を使用して本件著作物を再生し、客に歌唱させて、本件著作権を侵害した、あるいは今後侵害するおそれがあるとして、カラオケ装置による再生等の方法による本件著作物の使用の差止め及び損害賠償(平成一二年二月一七日からの年五分の割合による遅延損害金の支払を含む。)等を求めている事案である。
一 争いのない事実等
1 原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」に基づく許可を受けた音楽著作権仲介団体であり、内外国の音楽著作物の著作権者から著作権及びその支分権(演奏権、録音権、上映権等)につき信託的譲渡による移転を受けるなどしてこれを管理し、国内の放送事業者を始め、レコード、映画、出版、興行、社交場、有線放送等各種の分野における音楽の使用者に対して音楽著作物の使用を許諾し、その対価として使用者から著作物使用料を徴収するとともに、これを内外の著作権者に分配することを主たる目的とする社団法人である。原告は、本件著作権について、本件著作物の各著作権者から信託的譲渡を受けてこれを管理している。(甲第一号証、第二号証及び弁論の全趣旨によって認められる。)
2 被告B(以下「被告B」という。)は、平成元年一二月ころから、本件店舗を経営している。被告C(以下「被告C」という。)は、被告Bの妻であり、本件店舗においていわゆる「ママ」として稼働し、客らに対して自らを本件店舗の経営者と称している。被告D(以下「被告D」という。)は、被告B及び被告Cの子であり、本件店舗の保健所の営業許可名義人である。(なお、被告C及び被告Dが被告Bと共に本件店舗を共同で経営しているかどうかについては、争いがある。)
3 本件店舗には、平成元年一二月一日から平成一〇年三月までの間、レーザーディスクカラオケ装置が設置され、同年四月以降は、別紙「物件目録」記載のカラオケ関連機器(株式会社第一興商販売との間で締結した被告C名義のリース契約によって備えられたリース物件である。以下「本件物件」という。)が設置されており、その従業員らは、来店した客に飲食を提供するとともに、カラオケ装置を客に操作させて本件著作物の伴奏音楽を再生し、また、その伴奏音楽に合わせて客に歌唱させていた。
4 原告は、被告らを債務者としてカラオケ機器使用差止等の仮処分命令を申し立て(当庁平成一一年(ヨ)第二二一二七号、同第二二〇二六号)、平成一一年一〇月五日、被告B及び被告Cに対する仮処分決定を得た上(被告Dに対する申立ては取り下げた。)、同月一九日にその執行を行い、本件物件については、執行官が梱包・封印の上、本件店舗においてこれを保管することとなった(なお、本件物件の保管場所は、同年一二月二八日、株式会社第一興商販売商品管理課業務部の部屋に変更されている。)。その後、原告と被告らとの間で、損害賠償金の支払についての話合いが持たれたが、合意には至らなかった。
二 原告の主張
1 原告の許諾を受けることなく、カラオケ装置を使用して本件著作物を公に再生(演奏)し、歌唱することは、本件著作権の支分権の一つである演奏権(著作権法二二条)を侵害する行為に当たる。
営業のために自ら備え付けたカラオケ装置を用いて、限定された音楽著作物の中から客に選曲させ、その歌唱の機会を提供しているような飲食店においては、客がカラオケ装置を操作して音楽著作物の伴奏音楽を再生し、客がその再生された伴奏音楽に合わせて音楽著作物を歌唱する場合でも、当該音楽著作物の利用主体は、その店舗の経営者である(客は店舗の経営者の管理下において歌唱している)ということができ、経営者がカラオケ装置を使って当該音楽著作物を公に再生し、客に公に歌唱させているものと解される(最高裁第三小法廷昭和六三年三月一五日判決・民集四二巻三号一九九頁参照)。
本件店舗は、被告らが共同して経営するものである(被告C及び被告Dが被告Bと共に本件店舗を共同で経営していることは、被告Cが被告Bの妻であり、本件店舗でいわゆる「ママ」として稼働し、客らに対して自らを本件店舗の経営者と称していること、被告Cが本件物件のリース契約の名義人であること、被告Dが被告B及び被告Cの子であり、実際に本件店舗で稼働していたこと、被告Dが本件店舗の保健所の営業許可名義人であることなどに照して、明らかである。)。そして、被告らは、本件店舗において、営業のために自ら備え付けたカラオケ装置を用いて、限定された音楽著作物の中から客に選曲させ、本件著作物を歌唱する機会を提供していたものであるから、客がカラオケ装置を操作して本件著作物の伴奏音楽を再生し、また、その再生された伴奏音楽に合わせて本件著作物を歌唱していたことについては、被告らがその主体となって行ったものということができる。
したがって、被告らは、本件店舗において、原告の許諾を得ることなく、平成元年一二月一日から平成一〇年三月までの間はレーザーディスクカラオケ装置を、同年四月以降は本件物件をそれぞれ使用して、本件著作物を公に再生し、客に公に歌唱させて、故意又は過失により本件著作物についての演奏権を侵害していたものである。
2 被告らは、本件店舗での営業継続の意向を示しており、被告らの本件における一連の対応を併せみれば、被告らは、今後も本件店舗に設置したカラオケ装置を使用して、本件著作物についての演奏権を侵害するおそれが高いというべきである。
したがって、原告は、被告らに対し、著作権法一一二条一項に基づき、カラオケ装置を使用した本件著作物の再生(演奏)及び歌唱の差止めを求める権利を有する。また、本件物件は、同条二項の「もっぱら侵害の行為に供された機械若しくは器具」に該当するので、原告は、同項の「廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置」として、被告らに対し、本件物件を本件店舗から撤去することを求める。
3 原告は、被告らの右1の不法行為によって、平成元年一二月一日から平成一一年一〇月一八日までの間に、次のとおり、本件著作物の使用料相当額二二〇万九八六〇円の損害(著作権法一一四条二項)を被った。
すなわち、まず、本件著作物を利用する者が原告に対して支払うべき使用料は、原告が文化庁の認可を受けて定めた「著作物使用料規程」によるものとされている(著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律三条)。右規程によると、本件店舗のような社交場(キャバレー、バー、スナック、音楽喫茶店、ダンスホール、旅館その他設備を設け客に飲食又はダンスをさせる営業を行う施設)において本件著作物を演奏する場合の使用料は、包括的使用契約を結ばない場合には一曲一回の使用料によるものとされ(著作物使用規程第二章第二節5。なお、これに消費税相当額が加えられる。)、社交場の業種、生演奏・レコード演奏の別などに応じて、一曲一回の使用料(消費税別)が定められており(同規程別表15ないし18の各1及び2)、カラオケ伴奏による歌唱が行われる場合の一曲一回の使用料は、各業種に適用される生演奏の使用料とするものとされている(同規程社交場における演奏等の備考⑰)。
本件店舗においては、同規程の別表15の1が適用され、本件著作物をカラオケ伴奏によって歌唱する場合の使用料(消費税別)は、一曲一回九〇円である。そして、本件店舗において、平成元年一二月一日から平成一一年九月三〇日までの間は、本件著作物を一か月当たり少なくとも二〇〇曲歌唱していたから、その一か月当たりの使用料(消費税別)は、少なくとも一万八〇〇〇円であり、また、平成一一年一〇月一日から同月一八日までの間は、本件著作物を少なくとも一二〇曲歌唱していたから、その使用料(消費税別)は、少なくとも一万〇八〇〇円である。そうすると、平成元年一二月から平成一一年一〇月一八日までの一一八か月一八日間の本件著作物の合計使用料は、消費税相当額を含めて二二〇万九八六〇円である(なお、平成元年一二月一日から平成九年三月三一日までの八八か月間は消費税率三パーセント、同年四月一日以降は消費税率五パーセントである。)。
したがって、原告は、被告ら各自に対し、本件著作物の使用料相当額である二二〇万九八六〇円を損害として、その賠償を請求する。
三 被告らの主張
1 本件店舗は、被告Bが単独で経営するものであり、被告らが共同して経営するものではない。
また、本件店舗においては、歌唱したい客が勝手にカラオケ装置を操作して歌唱するのであって、カラオケ装置を客に無償で使用させているだけである。カラオケによって客を呼び込んだこともなく、カラオケによって売上げが上がったという事実もない。
2 被告らが本件店舗に設置したカラオケ装置を使用して、本件著作物についての演奏権を侵害するおそれが高いという点は、これを争う。
3 カラオケ装置を使用して歌唱する客は、ほぼ金曜日、土曜日に限られており、客同士が競って歌い合うということもなく、原告主張のような曲数を歌唱した事実はない。
四 争点
1 被告らは、平成元年一二月一日以降、故意又は過失により本件著作権(演奏権)を侵害していたかどうか。殊に、被告らが、本件店舗の共同経営者であり、自らその主体となって公に本件著作物を演奏したものといえるかどうか。
2 被告らに対する差止請求の可否。殊に、被告らは今後、本件店舗に設置したカラオケ装置を使用して、本件著作権(演奏権)を侵害するおそれがあるかどうか。
3 原告が賠償を請求し得る損害の額
第三当裁判所の判断
一 争点1について
1 まず、被告C及び被告Dが被告Bと共に本件店舗を共同で経営しているかどうかについて、検討する。
被告Cが被告Bの妻であり、本件店舗においていわゆる「ママ」として稼働し、客らに対して自らをその経営者と称していたこと、被告Cが本件物件のリース契約の名義人であることは、いずれも争いがなく、甲第七号証及び被告B本人尋問の結果によれば、被告Bは平成九年から平成一一年までの間、神奈川県足柄下郡<以下略>において飲食店「楽々亭」を経営し、その間、本件店舗の営業は被告C一人が行っていたことが認められる。しかしながら、他方、甲第一〇号証、第一一号証及び被告B本人尋問の結果によれば、平成九年及び平成一〇年分の本件店舗の営業に係る事業所得税の申告においては、被告Bが単独で本件店舗を経営しているものとされていることが認められるのであって、この点に照らせば、被告Cが被告Bの妻であり、本件店舗においていわゆる「ママ」として稼働し、客らに対して自らをその経営者と称しており、本件店舗の営業を被告C一人が行っていた時期もあったとしても、家族による手伝いの域を超えてその経営に参画していたとまで直ちに認め得るものではない。また、被告Cが本件物件のリース契約の名義人である点についても、被告B本人尋問の結果によれば、カラオケ装置のリース契約の名義人については当初被告Bであったところ、被告Bと被告Cとの間で離婚話が出た際に、将来離婚する事態となった場合を慮って被告C名義に変更されたことが認められ、右の事情に照らせば、被告Cが本件物件のリース契約の名義人であることを理由に本件店舗の経営者であると直ちに認めることはできず、他に被告Cが本件店舗の経営に被告Dと同程度に参画していたと認めるに足りる証拠はない。
被告Bが被告B及び被告Cの子であり、本件店舗の保健所の営業許可名義人であることは、いずれも争いがない。しかしながら、被告B本人尋問の結果によれば、本件店舗の営業許可名義人については当初被告Bであったところ、被告Bが体調を崩して入院したのを機に被告Dに変更されたこと、被告Dは、本件店舗において手伝いをしたことはあったものの、従業員として有償で働いたことはないことが認められ(なお、甲第五号証には、被告Bの「ヒデ」と呼ばれる息子が本件店舗で働いていた旨の記載があるが、被告B本人尋問の結果によれば、その「ヒデ」と呼ばれる息子は、被告Dとは別人であることが認められる。)、右の事情に照らせば、被告Dが本件店舗の保健所の営業許可名義人であることを理由に本件店舗の経営者であると直ちに認めることはできず、他に被告Dが本件店舗の経営に被告Bと同程度に参画していたと認めるに足りる証拠はない。
したがって、被告C及び被告Dは、被告Bと共に本件店舗を共同で経営しているものとは認められず、本件店舗は、被告Bの単独経営というべきである。
2 本件店舗には平成元年一二月一日以降、カラオケ装置(レーザーディスクカラオケ装置又は本件物件)が設置されており、その従業員らは、来店した客にカラオケ装置を操作させて本件著作物の伴奏音楽を再生し、その伴奏音楽に合わせて客に歌唱させていたことは、前記のとおりであり、甲第五号証ないし第八号証、被告B本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、本件店舗においては「飲み放題&唄い放題」と書かれた広告チラシが配布されていたこと、来店した客は従業員らから「自由に入れてください」と言われてカラオケ装置の操作用リモコンを渡され、他の客の面前で歌唱していたこと、株式会社コインジャーナル発行のカラオケ愛好者向けの雑誌「月刊カラオケfan」一九九一年三月号には、「二枚目マスターとカラオケ無料が人気の秘密」、「何曲歌っても無料というリーズナブルな料金で都内だけでなく近県からのファンにも好評なお店」などという本件店舗についての記事が、その営業時間や料金の案内、所在場所を示した地図と共に掲載されていたことが認められる。
右の事実を総合すれば、本件店舗の経営者である被告Bは、本件店舗において、営業政策の一環としてカラオケ装置を備え置き、その使用に対して料金を収受しないことを強調して客の来集を図り、客にカラオケ装置の操作用リモコンを渡して歌唱を勧め、本件店舗に備え置かれたカラオケ装置によって用意できる範囲内で選曲させ、被告Bの管理の下、客にカラオケ装置を操作させて本件著作物の伴奏音楽を再生し、その伴奏音楽に合わせて客に歌唱させていたものと認められる。このような事実関係の下においては、カラオケ装置による演奏(伴奏音楽の再生とこれに合わせた歌唱)という形態による本件著作物の利用主体は、被告Bであり、同被告は、自らその主体となって、公衆(不特定多数の者)に直接見せ又は聞かせることを目的として本件著作物を演奏したものというべきである。
したがって、被告Bは、平成元年一二月一日以降、故意又は過失により本件著作権(演奏権)を侵害していたものというべきである。
3 前記1のとおり、被告C及び被告Dについては、本件店舗の営業に一部関与していたことは認められるものの、被告Bと共に本件店舗を共同で経営しているとまでは、証拠上認められないから、被告C及び被告Dが本件著作権を侵害していたと認めることはできない。
したがって、被告C及び被告Dに対する損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
二 争点2について
1 甲第一二号証の一、二、第一五号証の二及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件店舗の経営者に対し、書面を合計一二回送付するとともに、職員を本件店舗に合計三回にわたって派遣し、本件店舗においてカラオケ装置を使用して本件著作物を客に歌唱させる場合には原告の許諾を得ることが必要である旨を説明し、さらに、平成一一年一月二〇日付けで警告書を送付して、原告と本件著作物についての利用許諾契約を締結するよう促したが、被告Bは、何らこれに応じなかったこと、被告Bは、本件物件について、執行官が梱包・封印の上、本件店舗においてこれを保管することとなった後、二度にわたってこれに施された梱包を解き、封印を破棄したことが認められる。これらの事実関係に照らせば、被告らは、今後も本件店舗に設置したカラオケ装置を使用して、本件著作物についての演奏権を侵害するおそれが高いというべきである。
したがって、原告は、被告Bに対し、カラオケ装置を使用した本件著作物の再生(演奏)及び歌唱の差止め並びに本件物件を本件店舗から撤去することを求めることができる。
2 被告C及び被告Dがこれまで本件著作権を侵害していたと認められないことは、前記のとおりであり、同被告らが今後本件店舗に設置したカラオケ装置を使用して、本件著作物についての演奏権を新たに侵害するおそれが存することを認めるに足りる証拠もない。
したがって、被告C及び被告Dに対する差止請求は、理由がない。
三 争点3について
原告は、故意又は過失により本件著作権を侵害した者に対して、本件著作権の行使につき通常受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができるところ(著作権法一一四条二項)、甲第五号証ないし第八号証及び弁論の全趣旨によれば、本件店舗は、客席面積が一〇ないし一五坪、客席数が二六席前後であり、日曜日、月曜日及び祝祭日を定休日として、通常午後七時ころから翌日午前三時ころまで営業していること、平成三年ころは昼間も営業していたこと、客一人当たりが通常支払うことを必要とされる料金(税別)は五〇〇〇円を超えるものではないこと、本件店舗においては、本件著作物について、平成元年一二月一日から平成一一年九月三〇日までの間は一か月当たり少なくとも二〇〇曲が、同年一〇月一日から同月一八日までの間は少なくとも一二〇曲が、カラオケ装置の再生による伴奏音楽に合わせて歌唱されていたことが認められる(甲第一〇号証、第一一号証、乙第一号証及び被告B本人尋問の結果によっても、右認定を覆すに足りない。)。
右認定の事実に甲第一号証ないし三号証を併せみれば、本件店舗において、本件著作権の行使につき通常受けるべき金銭の額は、本件著作物一曲一回当たり九〇円に消費税相当額を加えた額であり、平成元年一二月一日から平成一一年九月三〇日までの間は、一か月当たり少なくとも一万八〇〇〇円に三パーセント(平成元年一二月一日から平成九年三月三一日まで)又は五パーセント(同年四月一日以降)の消費税相当額を加えた額、平成一一年一〇月一日から同月一八日までの間は、少なくとも一万〇八〇〇円に五パーセントの消費税相当額を加えた額であったと認められる。
したがって、原告が被告Bに対して賠償を請求し得る損害の額は、二二〇万九八六〇円である。
四 以上によれば、原告の請求は、被告Bに対する請求については理由があるが、被告C及び被告Dに対する請求については、いずれも理由がない。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 三村量一 裁判官 村越啓悦 裁判官 中吉徹郎)
別紙物件目録
東京都世田谷区<以下略>所在の飲食店「シャレード」店舗内に設置されたカラオケ装置の機器一式
別紙「カラオケ楽曲リスト」 省略